・西行法師/何事のおわしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる
私の宗教観を定めたような気がする、たいへん心安らぐ和歌である。神道の八百万の神を仏道にある身から、受け止めた大変趣深いうたなのだ。
同じく西行作として以下のものがある。
・願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ
このうたは私に死生観を与えてくれたうたのような気がする。
死というものが、恐ろしいものではなく、むしろ心に安寧をくれるものだと受け止めることができたと思う。
どう生きればいいか、どう死ねばいいか。
何かを得なくてはならないと、自分を追い立てることが如何に虚しいか、人生に怯えて立ち止まったままでいる自分に、心の開放を見せてくれた和歌のように思う。