RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

根治不可

何日か前に、施設の相談員と入居している人との会話を小耳に挟んだ。

この人がどういう理由で入居しているのかはわからないが、おそらく家族や一人で暮らすことが難しいからなのだろうと思う。

しかし最も目を引くのは、鼻から酸素を入れるための比較的大きいキャスターの手押し車だろう。最近だと呼吸器の弱った老人や、肺に何らかのダメージを負った人が想像される。その人は比較的若いようだったが(話したことがないので年齢は知らない)この酸素ボンベを手放すことができないほどの症状らしかった。

そうして聞こえた内容を聞くともなしに聞いていたら、相談員が言った。

「あなたの症状では・・・(症状の説明)、そういうわけで、良くなることは決してないし、治ることもないので現状維持、もしくはじわじわと悪くなることが考えられます」

まあ、そういうこともあるよね…

治らない、悪くなるということも考えられるよね…

途中で肺のレントゲン写真を見ていたのでつい見てしまったが、肺の形に白くチョークで塗ったようになっていた。まるで余命を数えるような話が続いていたが、それ以上は聞けなかった。

あなたはこの病気で死にます、余命は何時まで持つかわかりません。そういう宣告を晴れた日の午後に陽の降り注ぐ窓際できくというのは、シュールだしなんだか胸が潰れるような気持ちになった。

確か落語家の故桂歌丸師匠もこのパターンの呼吸器障害で亡くなったはずだ。確かに呼吸器不全は治療法がない。延命方法も単に順酸素で呼吸を保たせるだけだし、それも何時まで効果があるかはなんとも言えない。

 

明るい日差しの下で余命宣告を受けるのはどんな気分なんだろう。