短歌
浅き寝に見知らぬ人の夢をみる息苦しさを覚えた距離は
無表情につぶやく言葉はまるで鈍色刃物だよ バカは死ね
いつからか知らずくせつく独り言空に向かいて寂しいという
倦むばかり明るき外眺め濃いブラックコーヒー飲む昼下がり
会いたいと言葉を飲んで空見れば疲れすぎてる望月のころ
一人座り飲むコーヒー苦すぎる話す間もなく君と別れて 背中眺めたつまらない気分すら君の笑顔は少し救うね
さめざめと泣いた気がして頬ふれる起き抜けの肌荒い感触
雨音が我責め立てているようで耳ふさぎ臥す誰もいぬ部屋 一言を話す事なく日を過ごす言葉すらいま忘れていくか 傘なんかいらない濡れてゆくからいま君の声聞けたらいいのに
葉の落ちた街路樹ふれた君がいて初めてわかる春が来た意味 暗い道を歯噛みして今歩く手探りしつつ目覚め待ちながら
路地裏の汚れ雪は溶け溜まり水何もない空の青映す 音もなく空往くものが過ぎ去れば 明るき日差し目眩むばかり いつもは暗し我が部屋もこの春の兆しの陽にカーテン透ける 明るき陽目を眇めあなたの事を思い出しては立ち尽くしてる
雲間より鈍く光れり狩猟月研ぎ澄ましたる針刺すごとく 幼き日狩猟月なる名を覚え今その由来忘れたり 冬
暮れなずむ街に大きな月登るオレンジ色の黄昏通り 冴えて凍てつく海と空切り裂いて凶つごとみたいな月登る
いく年の部屋の暗さが厭わしく身を震わせて窓開けた夜 賑わいの混雑寂しがりウィスキー舐めテレビ見る大晦日
一人ならすぐ死ぬだろう私だから孤独なんて意味ですらなく この街の慌ただしさは疎ましい立ち止まり空眺める夜に
凍えた地下室で盗む眠りは優しくていつも花の夢見る
渇いた心凍らせる雨よ降れ暮れなずむ空冬の玄より
雨降る晩はただ寂しくて己の罪を数えあげ指を折り 冬の飛行機雲流れるたびにほら突き刺してくれとつぶやいて
セックスをまた詮無きと諦めるあなた夢見て目覚める夜に
忘れるわけがないと決めていたのにこの手のひらに覚えてたきみ 気持ち紛らわしては目を凝らす夕闇の空宵の明星 特に寂しくないけれど時には人とたわいなく話したくなる
夢の中這いよる蛇を踏みにじり戦いて君呼び続けてた 雲の向こうの幸せを語る女が哀れなり冷ややかに見る
あの時の腹立たしさを罵倒する己に向けてメール打つ夜
落ち葉踏みあなた想わぬ時は他に何も思考せぬただ一人
携帯のアドレス消して満足ときみの番号ひとつ残れり
秋の日差しの向こう側離別せし妻通り過ぎゆく きみの肌きみへの思いどちらとも大事なんだよ震えるほどに
秋空にそっと思い描いてはふれそうになる君の肌恋し
うつむいて歩く朝に考える食器二つを買う癖の事 君裏切ったあの日を忘れない苦しいなんて言ったあの日を ながれゆく9月の雲に問う言葉思いつかずに風を眺める
泣きたい泣きたいただ愚かな自分を嘲り笑いたい泣けない
蝉の死骸踏みつけ歩く夕暮れあなたの科白リフレインする
あなたにはなんにも価値がないけだるく言ったきみ追って走る夏
もしかしたら忘れられてしまったのそんな気のする夏の夕暮れ