松涛美術館で先月25日まで開催されていた「素朴美の系譜」を、最終日に滑りこみで観た。
江戸期の展示は仏教説話などの六道絵や縁起絵巻、屏風絵から発展した表現主義的な系統など。
洛中洛外図屏風や多賀大社の参詣曼荼羅図屏風はコミカルな表現がおもしろい。
この当時のものを言葉にすると、瓢げた仕草というのが一番しっくり来るようだ。
江戸中期以降になって目を引いたのが仙突義梵の「蜆子和尚」。
観た瞬間、これはしりあがり寿だなあと思う。あっちが真似たのだろうけど。
南天棒の「雲水托鉢図双幅」は二幅の掛軸だが、片方は向うに進む雲水たちの背中。もう一幅はこちらに向かってくる雲水の列。
頭身を下げてまるまっちく描かれた雲水たちがかわいらしい。具体的に言うとピクミンみたいだ。
展示スペースを上がり、時代が進むと小杉放庵の「虎渓三笑」を鑑賞。
老人が3人、立ち話をしながら笑う図が楽しい。このモチーフは有名なのだろう、江戸期にも描いたものがあった。
岸田劉生の永日小品では麗子微笑で観たのと同じ笑いのキャラクタを画面の端に配していて、そこばかりがなぜだろう、とても気になった。
その後は武者小路実篤や夏目漱石などがあったけれど、一番気になったのが谷中安規。
版画で表現されたイメージはコミカルというよりアンダーグラウンドな雰囲気で、特に「蝶を吐く人」と「瞑想氏」が目を引いた。
また「鍵」という作品はエロティックな描写が家畜人ヤプーのようなイメージに感じられて面白い。
いくつか棟方志功の版画があったが、これには企画が狙っているような素朴美をあまり感じなかった。
まあ、あんまり好きじゃないから、かもしれない。