RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

残響音

現実には声をあげられないなら。
頭の中で、できる限りの絶叫をするといい。

頭蓋中に響き渡る声を想像するのは難しい。
それを出す事を想像するのは、なおさらだ。
だから最初は小さく息を吐きながら、意識だけで叫ぶ事を学ぶといい。
始めたばかりでは想像通りの感覚は得られないから、
夢の中で悲鳴をあげる感覚を思い出せばいい。
最初は霞をつかむような手ごたえのなさに、あっけにとられるだろう。
けれど続けているうちに、やがては頭蓋を震わせる事ができる。
徐々に、徐々にその感覚がやってくる。

最後には、自在に雷鳴のような悲鳴を想像できるようになる。
凍てついた心の色を思い浮かべるような、悲しみそのもののような叫び。
いつかは、そのはかないエコーで意識を消し去れる日が来るだろう。
その時を待ちながら悲鳴を、哄笑を、慚愧を脳裏に轟かせるがいい。