RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

死の思い出

これは心の傷なのか、それとも何も感じないだけなのかわからないので、ここに書いてみる。決して感動ポルノを狙ったわけではない。ただ、私の心に突き刺さった棘を覗いて見るような、つまらないことである。

 

私には、生後数日で死んだ弟がいた。

産院でミルク授乳後、喉につまらせて死んでしまったと母から聞いた。

家に連れ帰り家族が涙にくれる中、私だけは泣いていなかった。何だか本当の事とは思えなかったのだ。

横たわる弟。私だけガラスの向こうにいる感覚。悲しみと恐怖。いや、恐怖ではないかも知れない。説明し得ない感情。言い表せないそれを、咀嚼しようとあがいていた。でも涙は流れなかった。

私が泣いていないのを気づいた父親は、私を殴りつけた。

「お前は悲しくないのか!」

 

お父さん、俺は泣きたくても涙が出ないんだよ。どうしたらいいのか、自分でもわからないんだ。でも悲しいんだよ。本当なんだよ。

 

別に父に恨みはない。だが、心の棘は確実に父親が突き刺したものである。