そうしたゴタゴタが一応の解決を見たしばらくあと、彼女が訪ねてきた。話がある、という。
別れ話だった。もうああ言う騒動は懲り懲りだ。無駄だ。あなたとは別れたい、と。
泣いて悔いていることを訴えた。全部俺が悪いんだ。頼むから別れないでくれ。いい歳をした男が泣いて謝るというのは、社会的に見てとても情けないと思う。みっともないとおもう。
例えて言えば大型犬が飼い主に遊んでほしいがために、ヘソ天になってもじもじしているようなものなのだ。情けないことこの上ない。
だがこのときの私は必死だった。
君のために私はすべてを捨てたんだ。頼むから、別れるなんて言わないでくれ。
それは本当だった。
二十年来の友を捨て、家族を捨て、職を捨てた。だがそれは全て自分の責任なのだ。だから彼女には何も言わずにやってきた。本当に、彼女のためを思って、彼女の自由を願って重荷にならないよう生きてきた。
その挙げ句がこれである。ばかばかしい。心労もあっただろうが、最終的に私の涙を信じセックスした彼女には申し訳ないと思う。
だがそれは彼女も考慮すべきであったと、いまさらながら思わざるをえない。
実はこの事件の前に、予兆のような事があったのだ。
それは別項にて。