RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

写真

酒を呷る。
見るとはなしに彼女の静かな表情を見て、息を落とす。
また酒を飲む。
のどを焼いて強い酒が降っていく。
それを感じながら、彼女を見る。
うめき声がもれるのを押し殺して、グラスをテーブルに押しやる。

気を紛らわせようと本を読む。
しばらく没頭して、ふと酒に手を伸ばす。
けれど伸ばした手が彼女に触れてしまうと、手はそれを取る。
本は脇に退けられ、また彼女を見る。
不意に彼女の姿態が脳裏をよぎる。

立て続けに酒を呷り、タバコに火をつける。
けれどそのとたん、止めろよという声が聞こえた気がして急いでもみ消す。
うっすらと昇るタバコの煙の向こうで、彼女の写真はこちらを見るともなしに
眺めやっている。

自分を見てくれることのない面影に向かって、酒を呷り続ける。