RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

ロマン・ポランスキーも知らない

松涛美術館は、名の通り渋谷の高級住宅街、松涛の一角にある。
そう離れていないところを大きな通りが走っているのに、喧騒も聞こえない落ち着いた雰囲気だった。

その日はポーランド写真の100年史を観るために、夕方近くになって訪れた。
映画はともかく、東欧の写真に触れられる事はあまりないからできればゆっくり観たかったのだが、駆け足で閉館間際に観ることになった。
写真展自体は良くできた構成だった。ジャンルも網羅されているように思われたし、風景や世相、社会情勢をからめたものものもあり、そうかと思えば実験的作品も多く、一言で言えば面白いものだった。
そう、一人であれば楽しめただろう。同行者がいなければ。

何を話しても、感想を述べてみても、ただうなずくばかり。写真には疎いから、良く知らないから。うん、まあそれはしょうがない。知ったかぶって講釈垂れる奴もいやなものだ。けれど、つまらなそうに首をかしげるばかりの奴では、なんとも馬鹿らしくなってしまう。
面白くなければ、来なければいいのに。

そして、それはポートレートのコーナーで起きた。
スタニスワフ・レムを知らないのは、まあ許せる。SF作家なんてものはいくら重厚、高名とはいえ一般には知られにくい。半村良だって戦国自衛隊がなければ徐々に忘れられる作家だ。
そのポートレートなんて、けっこう貴重なのだけれど。
しかし映画好きと公言していた同行者にも知った名だろうと、ポランスキーを指し示して「さあ、だれです?」と言われた時にはあきれた。
知らないのか。映画かなり見てますよとか、けっこう自慢気だったじゃないか。ローズマリーの赤ちゃんとかチャイナタウンとか有名だろ?
フランティックなんてハリソン・フォードなんだから知っているよね?
答えはそりゃあ見てますとも、だった。
だから、あきれてそいつとは、いや誰とももう行くまいと思ったのだ。

書いてみて今更ながらに残念だ。
美術館は一人にかぎる。