RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

僕は「あらかじめ失われた恋人たちよ」を知らない

ええ、すごく情けなくて、恥ずかしい話なんですけれど僕は表題作を知らないんですよ。十代の頃から映画はそれなりに見てきたと言えるかと思うのですが、邦画作品となると、がくんと記憶がない。

考えてみると見てきたのは洋画のいわゆるゴア映画、スプラッタの先駆けのようなものとか、SF、ホラー、邦画で言うと時代劇、新東宝の作品をちょこちょこ、最も多いのがアニメ特撮といったオタク活動をしてたのです。

ですから邦画のタイトルも知らない、出演者も知らない、見たことがあるのはATGの制作物を少しと、あと何だろう…取り敢えずまあ、少しは知ってるというていたらくで。

このタイトルは付き合っていた彼女に、ぜひブログに名前をつけてくれとねだってつけたものです。ATGの作品から採られたのを知ったのは、名前で検索してみて、初めて知りました。そしてその後観たいものだとは思いながら、今に至ります。信じられないことに今も観ていない!

それを誇ることは馬鹿のすることですが、かといって今更見るのもな…レンタルにないし…などと言い訳めいてつぶやいてしまいます。アマゾンプライムで観られるのにね。

 

一度、彼女にこのタイトルをどうしてつけたのか、聞いてみたことがあります。でも彼女は言葉を濁して、教えてくれませんでした。

きっと言葉が自分たちを象徴していると、思ったのじゃあないでしょうか。成就せぬ恋、実を結ばぬ花のごとく、それはいつか破綻する水風船、そんな物を連想して答えたんじゃないかな、と今では思います。馬鹿なのでその時には何だかよくわからない不安を感じて、でもそれが何かはわからず、背中にじっとりとした汗をかきながら、良いタイトルだね、とせいぜい虚勢を張って答えた事を覚えています。

きっと彼女は僕の心を読み、そのキョドりっぷりからお見通しで、わかりもしないのにわかったフリをする僕を見て可笑しかったことだろうな、と今ではそんな事を考えます。

あの時はたしかに不幸だったけれど、幸せでもありました。

良い時を過ごしました。

そして、家族を見捨て、ただ一人となり、彼女のために生きる。そんな幸福があるとすれば、まさにその時が幸せでした。でもそれは今考えると悍ましい感情、きっと誰からも非難しかされない事に違いないのです。

だから私はマイナスの人生となったところで、仕方がないのです。あの時の幸福を思い出して、今の不甲斐ない人生を埋める、そんな生活がお似合いなのです。

 

髪の毛がまぶたを覆い、物がよく見えなくなって来ました。みつめると滲んだ世界が見えます。

何かが頬を流れます。きっと目に入った髪のせいで、目がちくちくしたからでしょう。時々、何もしていないのにひどい徒労感と不安、恐怖、そして何もかも捨て去りたい衝動に駆られます。

そんな時は睡眠薬を飲んで、眠りに逃げるしかありません。

それでも悪夢を見るし、部屋の片隅から私を呪う声が聞こえるし、誰かが僕を見ています。

家中の電気を点け、好きな音楽を静かに流しながら、ベッドに座っていると、あの日の幸せが蘇ります。

あの幸せは本当の事だったのに。それを吹き飛ばしてしまった自分の愚かさに体が震えます。でも、いつかは破裂することを予言された水風船のような僕には、そんな事はわからなかった。

明日が怖い。朝日が怖い。愚かな僕はどうやって生きていけばいいんだろう。そんな事を考えながら今日もベッドに座る僕です。