RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

鯖江ポンプ「近所の最果て」

一読、なんと判断するかに迷った。

とらえどころのないような、まるで手で触ろうとすると突き抜けてしまうような。日常と非日常がまぜこぜになった風景。

面白い。たしかにおもしろいのだが、この作品集は強い意志とか、なにか描いてやろう、という手応えを感じさせない。自然体なのだ。少なくとも私はそう思う。

巻頭の「ハダカヨメ」からして、なんと日常的なことか。ハダカである以外、何もおかしくない。いや、事実として自宅で服を着ない人たち、裸族というのは存在しているので、そういう意味では鯖江的日常である、のかも知れない。あ、解説で奥さんのことかと質問されるらしいことに笑いが出る。フィクションにリアルを重ねるなということですね、すみませんw

「悪い魔法使い」にしてもそうだ。なんだか普通の会話、いや研究者が普段こういう会話をしているのかは知らないが、別になんでもないような事を話しているうちに女性研究者は魔法を発動させてさり気なく、近くにいるだけでドキドキする、などと告白する。ページ数ということだけでなく、この作品はもっと尺が有っても同じように淡々と、この二人の会話が連なるのだろうな、と思わせる。

2P漫画の「SF」は特に好きだ。きっと脳内にいろんな機械を収納しているのだろうカップルが、何をイメージしてるのかわからないから画像転送しろ、というところは現実的ですらある。しかし最近愛情を感じないから送信しろという彼女に、軽いキスで送ったら、今解凍中と答えるのだ。圧縮ファイルかよ!感情は展開して送れよ、という気がして、これには笑いが浮かんだ。

 

鯖江さんには少しお世話になったことがあるので、ちょっと親近感を勝手に抱いているのだけれど、サイコンクエスト面白かったし、ここはぜひ単行本前後巻くらいの長さで日常的で違和感のない、しかし決定的に非日常である「夜明けの未来ちゃん」のような話が読みたいです。

そんな感想でした。