RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

坂道は私を拒絶する

脊椎の病気を患ってから、歩くことが億劫で仕方がない。

歩こうとすれば歩けるが、フラフラよろよろ、危なっかしい事この上ない。当然杖に頼ることになる。それも両手に二本持つことでなんとかまともな歩みになる。

私が住んでいるアパートは坂の一番下にあり、バスに乗ろうと思うと坂の上のバス停に登らねばならない。とは言え急坂でもないので、健常な人なら大まかに見て5分ぐらいの距離だろうか。

それを私は15分ほどをかけて歩まねばならない。一歩の歩みに追従して杖をつく。それを繰り返すことでようやく歩いているのだ。周りを見る余裕もなければ、首を上げること、時には吐く息すらも忘れる。それほど集中しなければ、歩けないのだ。そして帰るときもきつい。私にとって坂は登るより下る方がむつかしい。杖を突き損なえばバランスを崩して転ぶだろう。容易にその光景が想像できる。行きは息を切らし、帰りは恐る恐る足を踏み出す。

本当を言えばバスを利用したくない。家の前までタクシーを呼び、目的地に届けてもらうのが一番楽なのだ。だが、それには迎車料金も掛かれば、ワンメーターで着くこともない。ましてや帰りも疲れ果ててタクシーに乗ることになれば、たかだか一駅の距離を2千円近くも使って往復することになる。健康だった頃は、歩く距離としては往復歩いても苦にならなかったものだ。だからその交通費が腹立たしい。

もちろん障害者料金で割引はある。だが、それもたかだか一割であって、単なる外出、買い物に使ったタクシー料金は請求する先もない。病院に通う時は別だが。その時の乗車料金は公的に補助されるからだ。

だから、出不精ではなく、外へ出たいと思っていても、疲労や交通費を考えると憂鬱になってしまうのだ。身体が以前のように思い通り動かせるなら。いつも寝るときにそればかりが脳裏に浮かぶ。

後縦靭帯骨化症という発症理由が不明な病気になぜ、と問うのは愚問だ。単なる確率かも知れないし、何か複数の原因が有ったのかも知れない。生活習慣かもしれない。そしてこの病気が根治することはない。ただ治療が成功したので歩行が困難になったのだ。

 

意味のない想像だが、坂道に私は拒絶されている。