RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

SFが読みたい2004

早川書房の「SFが読みたい!2004年度版」を買う。
 いまさら石川喬司の有名な文章からSF作家分布図を出さなくても、と思う。しかも表一にもでてる。苦笑しながら読む。
 新世代作家座談会がおもしろかった。どうにもストレートな物言いをする人たちだな。何とはなしにもう少しシャイなものかと思っていた。
 「マルドゥック・スクランブル」の評価が高いが、私はこれを読めていない。購入してはあるのだが読む気にならない、というのもいかがなものか。
 その地平境界は他ジャンルとの混交が進み、今では希薄なものとなったSF。しかしその影は未だはっきりと落ちている。私はSFであるゆえに、その他の作品とは一線を画するものが読みたい。

amazon:錬金術師の魔砲

 などと言っておいて今回読んだのは「錬金術師の魔砲」J・グレゴリイ・キイズ 。
 なかなか重厚なのだが、逆に言うと立ち上がりが遅い。連作の初段だと聞けばなるほどとうなづける出来だ。
 科学でなく錬金術が発達した世界で、核のような大量破壊兵器が実用化されたら、というのが骨子だが主人公の一人の女性の動向に押されて、ストーリー上に占める割合は同じくらいなのにもう一人の主人公若き日のベンジャミン・フランクリンの影は薄い。おそらく新しい発明品のくだりや謎解きにかかるまでの登場人物の多さに翻弄されているからなのだろう。
 ニュートン卿も終盤まで出てこないし、フランスでは王様は裸だと言いたいが言えない、なんだかもどかしい展開で、小さな謎ばか散りばめてもカタルシスがないではついていけない。
 上下巻読んではみたがロンドン崩壊の描写も物足りず、肝心の錬金術の進歩によって改変された世界の説明もほとんどない。つまらなくはないけどここがおもしろい、というところもない。作品としては未だ出来上がらずという感じ。
 星をつけるのは余り好きではないが、十点満点なら二点。