RE:あらかじめ失われた日記

珈琲や紅茶が好きなおっさんです。でも別に銘柄にはこだわりません、日東紅茶とネスレのポーションで十分。

バロック・アナトミア/佐藤明

以前にこのブログで都築響一amazon:「珍世界紀行-lordsideEUROPE-」という本の感想を書いた。大分前のことだ。
その中に、ラ・スペコラ博物館を紹介していた章があり、非常に興味深かった思い出がある。その他の博物館も合わせて紹介されていたので、写真の量は少なかった。
ありがたい事に、少し前にヴィレッジ・ヴァンガードで、見たかったそのラ・スペコラの美しい写真集を見つけた。

バロック・アナトミア/佐藤明

慎重に型取りされ、人体を精巧に摸したこまやかなパラフィン細工の人形たち。
それは奇妙に、だが唯一無二に美しい。
人間の在りように終止符を打つ、死を表現しているはずなのに、その美しさには透明感すら感じる。
この中で紹介される、イタリアの人ガエターノ・ズンボという希代の蝋細工師が作り上げた「人生の栄光のはかなさ」に登場する、憂鬱の女神メランコリア
ロダンの彫刻「考える人」のように納骨堂の棺桶の上に座って、物憂げに悲惨な死の情景を眺めているその姿は、なんと静かなのだろう。

これは一つの達観なのだろうか。
写真集を眺めながら、その美しさに考える。